嘘の誓いとLOVE RING
右側に凌祐がいる。
それは、昨日までの私にはなかった景色で、手から伝わる温もりも、今まで知らなかったものだ。
凌祐の手は、私よりずっと大きくて、そしてゴツゴツとしている。
こうやって握られると、どこか安心感があるから不思議だ。
そんな気持ちを感じながら婚姻届を提出する窓口へ行くと、拍子抜けするほどアッサリと受け取られ手続きは終わった。
「すごく事務的なのね。もっと、“おめでとうございます!”とか、言われるのかと思った」
窓口を後にし役所を出ると、凌祐は苦笑いをしたのだった。
「現実ってのは、そんなものだよな。じゃあ、さっそく新居へ行くか」
「もう新居!?」
「いちいち、驚くなって。俺は早く二人きりになりたいけどな」
ニヤリと笑う凌祐は、どこまで本気なのか分からない。
だけど、その言葉に甘く反応する自分がいる。
そして、改めて思う事。
それは、私たちが夫婦になったという事実。
さっきから、繋いだ手がどこか痛いと思っていたら、凌祐の結婚指輪が当たっていたからだと気付く。
私とお揃いの結婚指輪。
凌祐の左手薬指にはまっているその景色は、不覚にも私の胸を熱くさせたのだった。