嘘の誓いとLOVE RING


右側に凌祐がいる。

それは、昨日までの私にはなかった景色で、手から伝わる温もりも、今まで知らなかったものだ。

凌祐の手は、私よりずっと大きくて、そしてゴツゴツとしている。

こうやって握られると、どこか安心感があるから不思議だ。

そんな気持ちを感じながら婚姻届を提出する窓口へ行くと、拍子抜けするほどアッサリと受け取られ手続きは終わった。

「すごく事務的なのね。もっと、“おめでとうございます!”とか、言われるのかと思った」

窓口を後にし役所を出ると、凌祐は苦笑いをしたのだった。

「現実ってのは、そんなものだよな。じゃあ、さっそく新居へ行くか」

「もう新居!?」

「いちいち、驚くなって。俺は早く二人きりになりたいけどな」

ニヤリと笑う凌祐は、どこまで本気なのか分からない。

だけど、その言葉に甘く反応する自分がいる。

そして、改めて思う事。

それは、私たちが夫婦になったという事実。

さっきから、繋いだ手がどこか痛いと思っていたら、凌祐の結婚指輪が当たっていたからだと気付く。

私とお揃いの結婚指輪。

凌祐の左手薬指にはまっているその景色は、不覚にも私の胸を熱くさせたのだった。

< 11 / 220 >

この作品をシェア

pagetop