嘘の誓いとLOVE RING
「それでは、お疲れ様でした!」
「お疲れ様~!」
ホテルの一室で、佐倉さんの掛け声と共に、取締役らが一斉に乾杯のグラスを当て合う。
日に日に気が付いてきたけれど、役員たちの中での佐倉さんの位置は特別だ。
凌祐だけではない。
専務にも常務にも、みんなに可愛がられている。
明るくて気が利いて、それでいて美人で。
そこに、私が入ってきたところで、居場所などなかった。
ただ、“社長夫人”の立場が、ぎりぎり居場所を作ってくれていて、取締役たちも挨拶をしてくれる程度だ。
だから私は、凌祐がいなくなると同時に、何の価値もなくなるというわけだ。
夕食はバイキング形式になっていて、凌祐は他の取締役たちと談笑している。
その隣には、佐倉さんがピッタリとくっついていた。
こうやって見ると、佐倉さんの方がお似合いだ。
美男美女で、知的さたっぷりの二人だった。
そんな中で、疎外感たっぷりの私は、出入りする取締役に紛れて部屋を出た。
ホテルの周りには、コンビニが一軒あるだけで、他は山と街へ続く草原が広がっている。
シーズンオフという事もあり、人は少ない。
ホテルの玄関の側にあるベンチに座り、夜空を見上げた。
都会では、決して見られない星が、ちらほらだけれど見える。
ここは、凌祐と佐倉さんが何度も訪れた場所。
きっと、この星空を二人で眺めていたのだろう。
それを想像したら涙が一筋、頬を伝った。