嘘の誓いとLOVE RING
マンションへ戻った時には夕方も終わりに近づいており、リビングからは夜の景色に染まり始めていく街が見えていた。
凌祐はすでに帰っていて、着替えもせずにソファーに座っていたのだった。
そして、私を見るとすぐに立ち上がり、駆け寄って来た。
「美亜、ごめん。俺が、おとなげなかったと思う。圭祐との仲を疑った事、怒ってるんだろ?」
そう言われて、思わず拍子抜けだ。
どうやら凌祐は、佐倉さんとの仲が知られているとは、露ほどにも思っていないらしい。
「違うわよ…」
素っ気なく答え、バッグから離婚届を取り出すと、それをガラステーブルへと置いた。
「な、何だよこれ…」
凌祐にとっては想像もしていない仕打ちだったらしく、ひどく動揺している。
「私のサインはしてあるから、後は凌祐がサインして。ゆうべ、見ちゃったの。凌祐が佐倉さんの部屋へ入るところを」
そう言うと、凌祐は必死に首を横に振った。
「あれは、違う。誤解だ」
「何が、誤解なの?知ってるんだよ。凌祐と佐倉さんに、体の関係があった事。今でも続いてるんでしょ?だから、私が秘書になる事も反対したのよね?全部、知ってるんだから」
すると、凌祐は反論する事なく黙り込んでしまったのだった。