嘘の誓いとLOVE RING


自分が持ってきてサインをした離婚届とはいえ、まさかここまであっさりと、凌祐がサインをするとは思わなかった。

躊躇する様子もなく印鑑を押すと、凌祐はそれを四つ折にした。

「これ、俺に出させてくれないか?必ず出すと約束するから。最後くらい、美亜の為に出来る事をしてあげたいんだ」

「…分かった」

「ありがとう。明日には出しておくから」

凌祐は弱々しい笑顔を浮かべると、立ち上がりそして私の手を優しく握った。

「ごめんな美亜。美亜の気持ちに沿わない結婚をした事で、結局悲しい思いをさせてしまった」

「別に…。お父さんたちに乗せられて、結婚した私も悪いんだから」

やめてよ、凌祐。

なぜ、謝るの?

これじゃあ、佐倉さんとの仲を認めた事と一緒でしょ?

本当は、心のどこかでは期待していた。

きっと、全力で否定してくれると。

だけど、私の離婚の申し出をあっさりと受け入れた上に、結婚そのものまで謝れたのでは、全てが嘘だったと言っている様なものだ。

今日までの短い間、凌祐が向けてくれた優しさは、全て嘘だったのか。

それを思うと、涙を堪えるだけで精一杯だ。

「とりあえず、しばらくはまだここにいろ。俺から親父さんにちゃんと説明をして、美亜を実家に帰すから」

凌祐の言葉に、私は小さく頷いた。

本当に、私たちは終わってしまったのだ…。

今、それを実感した。

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