嘘の誓いとLOVE RING


翌日、急遽午前中に用事が出来た圭祐は、どこかへ行ってしまった。

行く先をハッキリと教えてくれなかった上、私も同行する必要のない用事とは何だろう。

ゆっくりと話をする間もなく、慌ただしく行ってしまったけれど、しばらくしてそれは、実は大事な用事ではないかと思う様になったのだった。

それは、佐倉さんがやって来た事で分かった。

副社長室に来た佐倉さんは、神妙な面持ちで私を見たのだった。

「社長は、副社長と出られています。美亜さんとお話するチャンスは、今しかないと思って来ました」

どうやら、二人は同じ用事らしい。

それならば、教えてくれればいいものを、それをしてくれなかったのは、きっと何かがあるに違いない。

「話って何ですか?仕事中なので、仕事の話だけにしてください」

冷たく言い放つと、佐倉さんはきっぱりと答えたのだった。

「いいえ。仕事の話ではありませんが、大事な話です。お願いですから、話をさせてください」

話といったって、おおかたの予想はつく。

どうせ凌祐から聞いて、言い訳をしに来たのだろう。

睨みつける様に佐倉さんを見ながら、自席に着いた私は、構わずパソコンに目を移した。

それでも佐倉さんは、一歩も引く様子を見せず、目の前に立っている。

そして、ゆっくりと少し震える声で言ったのだった。

「美亜さん、私は謝りません。社長を好きだった気持ちは、悪い事だとは思っていないので」

< 137 / 220 >

この作品をシェア

pagetop