嘘の誓いとLOVE RING


「凌祐の気持ち…?そんなのは、決まってるじゃない。佐倉さんが好きなんでしょう?」

だから、出張の夜も二人で会っていたのではないか。

今さらながらの質問に、答えるのもバカバカしかった。

だけど、佐倉さんは首を横に振ったのだった。

「違います。社長には、本当に好きな方がいるんです。私は、その方の代わりにすぎないので」

「本当に好きな人?それは、どういう意味?」

「社長はずっと、想い続けている方がいて、でもそれは叶わない想いだったんです。私は、その寂しい心の隙間を、埋めるだけの存在でした」

意外な佐倉さんの話に、こちらは放心状態だ。

凌祐には、本当に好きな人が他にいたという事か。

てっきり、佐倉さんが好きなのだとばかり思っていたのに、一体どういう意味なのだろう。

自分の表情が、どんどん強張る感じがする。

「その証拠に、三年間も体の関係があったのに、一度も社長の恋人にはなれませんでした。いつだって、社長の心の中には、その方がいましたから」

「佐倉さんは、その人を知っているの?」

「はい、最初に話してもらいました。だから、私とは付き合えないとも。でも、それで良かったんです。私は好きだったから」

だからって、都合のいい様に凌祐に抱かれるなんて、同じ女としてはイライラする話だ。

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