嘘の誓いとLOVE RING
凌祐の想い人
マンションへ戻ると、凌祐が帰っていた。
私より、先に仕事が終わっているのは珍しい。
そう思ったけれど、それを口には出せなかった。
もはや凌祐とは、普通の会話すら出来ないからだ。
スーツ姿のままの凌祐は、私を見るなり小さな笑顔を浮かべた。
「お帰り、美亜」
何を思って声をかけているのか。
返事をする気にもなれず、無視をして着替えの為に部屋へ向かうと、背後から声が聞こえた。
「離婚届、出してきたよ。もう、今夜からは他人同士だ。こうやって、一緒に過ごす事もないから、最後だと思って少しだけ話をしないか?」
離婚届を、本当に出してきたのか。
“他人”
その言葉と、もう夫婦ではないという事実に力が抜ける。
着替えに向かった足を止め、ゆっくりと凌祐の側へ歩いたのだった。
「私も聞きたい事があるの。今日、凌祐がいない間、佐倉さんが来てね…」
「知ってるよ。聞いたから」
やっぱり、聞いていたか。
それにしても二人は、どこまでも情報を共有し合うらしい。
それにも、嫉妬が込み上げた。
今さらだけれど…。
「最後に聞かせて。凌祐の本当に好きな人って、どんな人なの?」