嘘の誓いとLOVE RING


言葉を濁す凌祐が怪しい。

まさか、敦貴の話は真実なのか。

ううん。そんなはずはない。

だけど、佐倉さんの退職は間違いなかったのだから、あながち出まかせではなかったというわけだ。

「何で難しいの?仕事を辞めるなら、なおさら会いたいよ。もう会えないじゃない」

しつこく食いつく私に、凌祐はどこか話し辛そうに言ったのだった。

「唯香さ、その…。子供が出来て。今、調子が悪いんだ。だから、もう少し先なら」

やっぱり、妊娠しているんだ。

その事実も驚きだけど、敦貴の情報が当たっていた事が衝撃だった。

だけど問題は、佐倉さんの相手だ。

その情報だけは違う。

それは信じている。

「それは、おめでたい話ね。で、相手はどんな方?」

努めて平静を装い、明るく聞いてみた。

すると、凌祐はハッキリとしない言い方をしたのだった。

「相手…。俺も知らないんだよ。ちゃんと聞けてなくて」

「え?知らない?」

そんな事があるのだろうか?

だいたい、会社を辞めるというのに、相手がどんな人かも聞けないでいるなんて、不自然過ぎる。

まさか、敦貴の言った事は本当なのだろうか…。

そんな訳はない。

凌祐が私を、裏切るはずはない。

そう思いたいのに、どこかで疑う気持ちが沸いてきた。

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