嘘の誓いとLOVE RING
副社長秘書!?
料理は、普通に得意だ。
それほど凝った物は作れないけれど、“おいしい”と言われる物を作れる自信はある。
結婚をして初めての朝、かいがいしくも朝食を作ってみた。
スクランブルエッグにトースト、それから生野菜サラダとフルーツ。
働く私にとっては、満点以上の朝食の出来だと思う。
丁度出来上がったところで、スーツに着替えて出勤の支度を終えた凌祐が、キッチンへやって来たのだった。
そして、ダイニングテーブルの朝食を見ると、顔を明るくした。
「美亜が作ってくれたのか?」
「うん。そうよ。たくさん食べてね」
なんて、可愛い奥さんの振りをする。
ダイニングチェアに座った凌祐は、真っ先にスクランブルエッグを口にし、そして固まった。
実はタマゴに、塩をたくさん入れているのだ。
辛さは半端ないはず。
もちろん、それはわざとやったものだった。
なぜかというと、ささやかな私なりの抵抗だから。
好きな人を振り向かせたければ、胃袋を掴めという言葉がある。
それならば、手放したい相手なら、胃袋から手放せばいい、そう思ったのだった。
さあ、凌祐はどうする?
「辛い」と文句を言う?
吐き出す?
それとも、しれっと残す?
反応を心の中で楽しみにしていると、凌祐は「美味しいよ」と笑顔を浮かべ完食したのだった。