嘘の誓いとLOVE RING


敦貴が夕方に連絡をしてきて指定した店は、高級料亭だった。

どうやらここは、一元お断りの店らしく、敦貴の特に贔屓にしている店らしい。

石が敷き詰められた中庭を通り過ぎ、奥の個室に案内されると、そこは掘ごたつの和室だった。

床の間に掛け軸や花が飾ってあり、雰囲気ある部屋だ。

「ほら、美亜座って」

敦貴は向かいに座ると、私を見て微笑んだ。

「ここ、かなり高級な感じね。落ち着いてるし…」

二人きりの場所だからか、どうも落ち着かない。

「薄暗いのが欠点だろ?もうちょっと、明るくてもいいんだけどな」

敦貴は笑いながら、さっそくやって来た料理を私に勧めた。

どれも、品良く盛り付けされた小鉢だ。

「酒はやめるよ?社長に怪しまれるだろ?」

「うん。ありがとう」

まさか、そんな細かい部分にまで気を遣ってくれるとは意外だ。

もしかして、敦貴は私に対して、それほど嫌がらせをしようとしてるわけでは、ないのかもしれない。

ただ、気まずい再会ではあるから、それであんなトゲのある接し方をしてきたのか…。

「社長が帰りが遅くなるって話、もしかすると本当に仕事なのかもしれないな」

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