嘘の誓いとLOVE RING
――秘書の仕事なんて、何をしたらいいか分からない。
それも、副社長秘書だなんて、素人に務まるのだろうか。
だいたい、副社長とは何をする人なのかも知らないのに。
という不安を抱えつつ、業務初日を迎えた日、久しぶりに顔を合わせた圭祐は、いとも軽く私を迎えたのだった。
「ちょっと笑えるよな。俺の秘書が美亜だなんて」
濃いグレーのスーツに、抑えめの黄色いネクタイを締めて、圭祐はニヤリと笑った。
「仕方ないでしょ?無理矢理、秘書にさせられたんだから」
それも、こんな慣れないスーツまで着させられて。
この日の為に、凌祐に選んで貰った濃紺のスーツだ。
それにしても、膝丈のタイトスカートは、歩きにくいたらない。
「へえ。無理矢理ねえ。やる気ないなら、秘書をされるだけ迷惑なんだけどな」
「えっ!?」
そうだった。
まともに会話をしたのは本当に久しぶりだから、すっかり忘れかけていたけれど、圭祐はこういう意地悪を言う人だ。
凌祐はどちらかというと、無視をしたり嫌みを一言、二言口に出す人だったけれど、圭祐はいちいち突っ掛かるタイプだった。
「俺は、毎日真剣に仕事をしてるんだよ。やる気がないなら、兄貴に頼んでやるから、さっさと辞めろよ」