嘘の誓いとLOVE RING


凌祐が優しい。

今までのイメージなら、「何しに来たんだよ」と言われそうなのに、心底心配している様子だった。

「ううん。大丈夫。ただ、佐倉さんに挨拶をしようと思っただけで…」

優しさは、正直嬉しい。

圭祐とは雲泥の差だ。

すると、凌祐はさらに驚いた様に言ったのだった。

「唯香に挨拶!?」

と。

凌祐は、佐倉さんを“唯香”と呼び捨てで呼んでいるらしい。

二人は、それほどまでに仲がいいという事なのか。

そちらが気になってしまい、肝心の挨拶が抜けてしまっていた。

だけど、すぐに気を取り直せたのは、凌祐だけでなく佐倉さんも驚いた様に目を見開いているからだ。

「あの…、いけなかった?」

「あっ、いや。そんな訳はないよ」

と、凌祐はぎこちない笑顔を浮かべて少し下がった。

怪しい…。

すると、佐倉さんが笑顔で歩み寄ってきたのだった。

「ご挨拶なら、こちらから伺わなければいけなかったのに、ありがとうございます。よろしくお願いします」

そう言うと、佐倉さんは会釈をしたのだった。

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