嘘の誓いとLOVE RING
穏やかな笑みを取り戻した佐倉さんとは反対に、凌祐はどことなく目が泳いでいる。
それを怪しく見ていると、ドアがノックされたのだった。
「あら?またお客様?」
出ようとした佐倉さんに、凌祐は素早く先を行くと、「いいよ。俺が出る」と言ったのだった。
“俺が出る”!?
家じゃあるまいし、だいたい社長自らが出るのか。
ドアが開き、呆然とする私の目に飛び込んできたのは…。
「やっぱり、ここだったか。勝手に席を空けるなよ」
険しい顔で睨みつける圭祐だった。
「圭祐!?」
飛び上がりそうな勢いで驚く私に、圭祐はさらに表情を険しくした。
「副社長って呼べ。ここは会社だぞ?」
どうして、こんなに頭ごなしなのか。
「だったら、そっちも“美亜”って呼ばないでくれる?私の事は…」
『“真中(まなか)”と呼んで』と言おうとして、口をつむいだ。
真中は私の旧姓。
とっくに凌祐との結婚で、“浅井”に名字が変わっていたのだった。
だけど、まだそれを口に出すのは恥ずかしい。
すると圭祐は、デリカシーのない言い方をしたのだった。
「“浅井さん”て呼べばいいか?兄貴と結婚したんだもんな?」