嘘の誓いとLOVE RING


穏やかな笑みを取り戻した佐倉さんとは反対に、凌祐はどことなく目が泳いでいる。

それを怪しく見ていると、ドアがノックされたのだった。

「あら?またお客様?」

出ようとした佐倉さんに、凌祐は素早く先を行くと、「いいよ。俺が出る」と言ったのだった。

“俺が出る”!?

家じゃあるまいし、だいたい社長自らが出るのか。

ドアが開き、呆然とする私の目に飛び込んできたのは…。

「やっぱり、ここだったか。勝手に席を空けるなよ」

険しい顔で睨みつける圭祐だった。

「圭祐!?」

飛び上がりそうな勢いで驚く私に、圭祐はさらに表情を険しくした。

「副社長って呼べ。ここは会社だぞ?」

どうして、こんなに頭ごなしなのか。

「だったら、そっちも“美亜”って呼ばないでくれる?私の事は…」

『“真中(まなか)”と呼んで』と言おうとして、口をつむいだ。

真中は私の旧姓。

とっくに凌祐との結婚で、“浅井”に名字が変わっていたのだった。

だけど、まだそれを口に出すのは恥ずかしい。

すると圭祐は、デリカシーのない言い方をしたのだった。

「“浅井さん”て呼べばいいか?兄貴と結婚したんだもんな?」

< 39 / 220 >

この作品をシェア

pagetop