嘘の誓いとLOVE RING


こんな場所で、そんな言い方をしなくてもいいではないか。

だいたい、凌祐との結婚自体、望んでしたものではない。

だから、いちいち引き合いに出されるのは腹が立つのだった。

お互いが睨み合う、まさに一触即発の雰囲気を、笑顔で壊したのは佐倉さんだった。

「私には羨ましいくらいです。そんな風に言い合える関係だなんて」

「え?」

佐倉さんの言葉に、思わず脱力だ。

そんな風に、羨ましいと思われる関係ではない。

「美亜さん。私も社長から、“唯香”って呼ばれてるんです。だから、副社長の事は、大目に見てあげてください」

口角を小さく上げて微笑む佐倉さんに、頷くしかなかった。

「はい。そうします」

うなだれる私の手を、圭祐は強引に掴んだ。

「戻るぞ。電話が鳴ってたらどうするんだよ」

「…分かった」

「じゃあ、お騒がせしました。兄貴に佐倉さん」

ほとんど棒読みで圭祐はそう言うと、足早に私を引っ張り副社長室へと戻ったのだった。

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