嘘の誓いとLOVE RING
「おい、何を考えてるんだよ。美亜、お前ちゃんと仕事をしてきたんだろ?無断で席空きをして、いいと思ってるのか?」
副社長室に戻るなり、さっそく圭祐から雷を落とされてしまった。
「ごめんなさい…」
副社長のデスクの前で、俯くしかない私に大きなため息が漏れている。
「まさか、兄貴に会いに行ったわけじゃないよな?」
「そんな事、あるわけないじゃない!圭祐も知ってる通り、私たちは無理矢理、結婚をさせられたのよ?」
と熱くなり、思わず手で口を塞いだ。
また、“圭祐”と呼んでしまったからだ。
すると、それまで眉間に深いシワを寄せ、険しい表情をしていた圭祐が一転、表情を緩め吹き出したのだった。
「もういいよ。社外で気をつけてもらえば、それでいい」
「え?それって…」
「“圭祐”って呼んでいいって事。まあ、今さらだよな?美亜からしてみれば、俺も兄貴も“隣の家に住んでる年の離れた人”って程度の存在だったんだろうし」
椅子の背もたれに身を預けながら、圭祐はため息まじりに言ったのだった。
「何だ、ちゃんと分かってるんじゃない」
そう憎まれ口を叩いた私に、圭祐は苦笑いを浮かべたのだった。