嘘の誓いとLOVE RING
「ったく。美亜は変わらないな。それより、何で兄貴の所に行ってたんだよ?」
「凌祐に会いに行ったわけじゃなくて、佐倉さんに挨拶に行ったの」
そう答えると一瞬、圭祐の表情が固まった。
そして、「何で?」と聞かれたのだった。
さっきから、凌祐も佐倉さんも、そして圭祐までも、何を驚く必要があるのだろうか。
そんなに、自分から挨拶に出向くというのは、おかしい事なのか?
「何でって、社長秘書の佐倉さんに挨拶をするのは当然でしょ?」
勝手に席空きをしておいて、あまり偉そうには言いたくなかったけれど、本当に当然だと思う。
すると、圭祐は「あ、ああ。そうだよな」と答えたのだった。
だけど、どこか歯切れが悪い。
「ちっとも私を紹介してくれなかったじゃない」
だから、自分から出向いたというのに。
口を尖らせると、圭祐は「悪い、悪い。美亜は兄貴の嫁さんになるから、あえて紹介はしなかったんだよ」と、分かるような分からないような言い訳を言っている。
「それにしても佐倉さんて、素敵な人ね。凌祐の秘書になって長いの?」
落ち着いた雰囲気から、私より年上なのは間違いない。
だからさっき並んでいると、自分を妙に子供ぽく感じたのだった。