嘘の誓いとLOVE RING
佐倉さんは、持っていたカップに、コーヒーの粉を入れている。
粉の入っている容器から見て、どうやらインスタントではなさそうだ。
「それ、もしかして、豆から挽いたんですか?」
そう聞くと、佐倉さんは笑顔で頷いた。
「ええ。社長好みのコーヒー豆なんです」
「そうなんですか。知らなかった…」
凌祐がコーヒーを好きな事も、どんな豆が好きなのかも全然知らない。
きっと、3年間ずっと側にいた佐倉さんの方が、凌祐の事をよく知っているはずだ。
「美亜さんとの事は、社長から聞いています。私でよければ、何でも聞いてください。知っている事なら、お話ししますから」
「ありがとうございます。凌祐は佐倉さんには、何でも話すんですね?」
と、他意のない質問をしたつもりだったけれど、佐倉さんから笑顔が消えた。
「すいません…。私、無神経な事を言ってしまって」
「えっ!?いえ、そんなつもりじゃないんです!」
もしかして、嫌みに聞こえてしまったのか。
私との事を聞いていると言ったから、この結婚が意に沿わないものだと知っているはずなのに。
「佐倉さん、ご存知の通り、私たちの結婚は意に沿ったものじゃないんです。だから、誤解しないでください」