嘘の誓いとLOVE RING
副社長秘書としての長い一日が終わった。
といっても、まだ会社にいる限りは終わった気はしない。
「今日はお疲れだったな。疲れたろ?」
すっかり帰り支度を整えた圭祐が、秘書室へやって来た。
「ううん。私こそ、いろいろごめんね。迷惑かけちゃった」
キャビネットやデスクに鍵をかけると、圭祐と部屋を出る。
「いいよ。お前も未経験の割にはよく頑張った」
ニヤリと笑った圭祐に、私もつられて表情が緩む。
「圭祐らしくないんじゃない?そんな優しい言い方は」
と、からかいながら廊下を歩いていると、後ろから凌祐に呼び止められた。
「美亜!圭祐」
「あ、兄貴。兄貴も今帰りか?」
二人で振り向くと、凌祐と一緒に佐倉さんもいた。
さっきの様子がおかしい佐倉さんとは違い、最初の印象と同じ穏やかな笑みを浮かべて会釈をしている。
「ああ。帰りなんだ。美亜、一緒に帰ろう」
「えっ!?一緒に!?」
凌祐ってば、何をしれっと公私混同をしているのか。
二人きりならまだしも、みんなの前で誘われたのでは、こちらの肩身が狭い。
「お言葉だけど、帰るまでが仕事だから」
やんわりと断ったつもりが、隣で聞いていた圭祐に吹き出された。
「おい、美亜。何だよ、その言い方は。“帰るまでが遠足”みたいだな?」
「だって…」
それに、気になるのが佐倉さんの様子だ。
やっぱり、昼間の雰囲気はおかしい。
「だけど、美亜、業務はもう終わったんだし…」