嘘の誓いとLOVE RING


隣で穏やかな寝息をたてる凌祐の左手を手に取る。

「大きな手」

締まった手に長い指が、さっきまで自分に触れていたものだと思うと、胸が熱くなるのを感じた。

そして薬指には、指輪がはめられている。

やっぱり、これを見ると妙な気持ちになってしまうのだった。

だって他人は、凌祐の左手薬指で、既婚者だと判断するわけだから。

そして、その相手は私…。

どうもリアリティが薄い。

まじまじと見ていると、凌祐の目がゆっくりと開いた。

まだ眠たそうで、ボーッとしている。

「何をやってるんだ?美亜」

「あ、ごめん。ちょっと、指輪を見てただけ」

「指輪?」

すると、凌祐は私の左手を掴んだ。

どうやら、私が自分の手を見ていたと勘違いしているみたいだ。

半分しか開いていない目で、凌祐は私の左手薬指を眺めている。

そして、ゆっくりとその指にキスをしたのだった。

「凌祐…?」

胸がときめく。

心臓の鼓動が速くなっていくのが分かった。

「美亜…」

凌祐は私の手を引っ張ると、包み込む様に抱きしめ言ったのだった。

「俺の奥さん…」

< 56 / 220 >

この作品をシェア

pagetop