嘘の誓いとLOVE RING


「おはよう!圭祐!」

副社長室のドアが開かれ、入ってきた圭祐は眉をしかめた。

「何だよ、やけに機嫌が良くないか?」

「えっ!?まさか。普通よ」

副社長室の掃除が終わり、はたきを持った私はドキッとした。

そんなに表に出ていたのか。

ゆうべ、凌祐に言われた“俺の奥さん”の言葉は、完全に私をノックアウトした。

寝ぼけていた様で、本人は覚えていないみたいだけれど。

今朝起きた時、少し恥ずかしくて顔をまともに見られなかった私とは違い、凌祐はいつもと変わらなかったから。

それでも、嬉しかった。

どうして嬉しいのか分からないけれど、やっぱり嬉しいものは嬉しいのだ。

どうやら、それが表に出ていたらしい。

「兄貴と“イイコト”でもあった?」

圭祐はデスクチェアに座ると、ノートパソコンを開けそう言った。

「別に。それに、私が機嫌がいいのが、凌祐絡みとは限らないじゃない?」

はたきを収めると、ドアを開け秘書室へ入る。

とその時、圭祐がデスクから声をかけてきた。

「無理矢理させられた結婚でも、愛情はついてくるんだな?」

< 57 / 220 >

この作品をシェア

pagetop