嘘の誓いとLOVE RING


カップを片付ける為に給湯室へ行くと、蛇口に“熱湯注意”と書かれたテプラが貼られているのに気が付いた。

「これって…。もしかして佐倉さんが?」

テプラに目を奪われていると、タイミング良く佐倉さんがやって来た。

同じくカップを持っている。

「あ、美亜さん。お疲れ様です」

私に気付き笑顔を向ける佐倉さんは、テプラを見ていた事に気付いたらしく、小さく笑った。

「それ、美亜さんも危なかったじゃないですか?実はあれから、社長も同じ事をしようとしたんですよ」

「凌祐も!?」

「ええ。普段、こういう場所を使われないのに、勝手に使うからですよって、注意させて貰ったんですけど」

その時の様子を思い出しているのか、佐倉さんはクスクスと笑っている。

それは、単に面白くて笑っているのではない。

愛しい人の話をする顔だ。

「だから、貼ったんです。他の方にも危ないから。それも、もう少しで終わりです。修理を依頼したので」

そう言って佐倉さんは、カップを洗い始めたのだった。

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