嘘の誓いとLOVE RING


その姿が、今では少し憎らしくも思えてくる。

「佐倉さんて、本当に気が利くんですね。こんな風にテプラを貼ったり。社長秘書のお仕事って、もっと忙しいのだと思っていました」

自分なりに嫌みを言ったつもりだ。

“忙しいのに、テプラが貼れる余裕があるんですね”と。

だけど、佐倉さんには通じていない様で、カップをカゴに置いた後、私に話してくれたのだった。

「最初に社長に言われたんです。どんな小さい仕事も、無駄だと思ってはいけないって」

「凌祐に…?」

小さく頷いた佐倉さんは、口角を上げて笑みを浮かべている。

「必ず、誰かの役に立っているからと。それから私は、仕事に対する考え方を改めました。だから私、社長が好きなんです」

「えっ?」

固まった私に、佐倉さんは笑った。

「変な意味じゃないですよ」

笑いながら弁解をしていたけれど、私にはそう思えなかった。

絶対に怪しい。

その疑惑を、ますます募らせたのだった。

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