嘘の誓いとLOVE RING


披露宴会場となったホテルを出て、凌祐はタクシーを拾った。

そして、行き先を告げると、タクシーは軽快に走り出したのだった。

「本当に今日出すの?」

「当たり前だろ?それに、式と同じ日にした方が、結婚記念日が混乱しなくていいんだよ」

説得力がある様な無い様な、その言葉に逆らえない。

すると、それまで黙っていた運転手さんが、話かけてきたのだった。

60代くらいの気の優しそうな男の人だ。

「もしかして、お客さん。新婚さんかい?」

すると、凌祐は愛想良く答えたのだった。

「ええ。実は、式を終えたばかりでして」

「そうなのかい!?それは、おめでとう!そういう事なら、縁起のいいタクシーを拾ったね」

運転手さんは調子のいい口調で、そう話した。

「縁起がいいとは、どういう意味ですか?」

さすが、凌祐。

私には、初対面からあまり踏み込まれる会話は好きでない。

だから、こういう場合、愛想笑いで会話を終わらせるところだけど、凌祐は会話に食いついた。

「このタクシーはね、子宝に恵まれるタクシーって言われてるから」

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