嘘の誓いとLOVE RING


子宝!?

思わず絶句する私の隣で、凌祐はまるで身を乗り出す様に会話を続けている。

「へえ。それは興味ありますね。どうしてですか?」

「いやね。うちは、なぜだか新婚さんを乗せる事が多くてね。乗ったご夫婦は、みんなすぐに子宝に恵まれるんだよ。何組ものご夫婦が、報告に来てくれるんだ」

何だか、怪しい話だ。

だいたい、新婚さんならすぐに子供が出来ても不思議じゃないから、別にこのタクシーに乗らなくても、出来るものは出来る。

そう思うけれど、凌祐の反応はまるで違っていた。

「それは縁起がいい。なあ、美亜?」

突然、話を振られて戸惑う私に、凌祐は目配せで脅してきた。

“話を合わせろ”

と。

「あ、うん。そうね。それは縁起がいいわ」

愛想笑いを浮かべると、話を合わせる。

私としては、そんなジンクスが効いてもらっては困るのだけれど。

「だから、お客さんたちも、きっとすぐだよ」

運転手さんは豪快に笑うと、アクセルを踏み込んだ。

それに合わせて笑う凌祐と、もはや引き攣る笑顔しか浮かべられない私。

さっさと、役所に着いて欲しい。

そう思ったのだった。

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