なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

 大なり小なり、パーティーなんて行ったことないから、どんな服を着ていけばいいのか正直わからない。

 よって、ナチュラルに黒のカクテルドレスを着ることにした。

 とは行っても、胸元はあまり開いていないもので、膝たけまでの長さ。でも背中はゴージャスとは言えないけど控えめに開いている。

 高いヒールなんて持ってないから、合いそうなものをチョイス。

 髪もひとつにまとめてピンクベージュのリップで仕上げた。


 きっと地味なんだろうけど、これが私の精一杯だ。


 普通の格好で問題ないからと言ってくれたし、これで大丈夫だと思う。そう思いたい。




 18時10分前にはロビーに降りて、冬山君が来るのを待っていた。

 オンタイムで到着した彼は、うん、タキシード。

 おかしくない?

 私またやった?


「夏菜ちゃん、すごい綺麗。最初どこにいるのか分からなかったよ」

 くすぐったい言葉を平気で言うから、お世辞でも照れる。

「私これで大丈夫かなぁ」不安だよ。

「ぜんぜん問題ないから。まじで一番綺麗だよ」

「...そ、そう? あ、ありがとう」調子狂うなぁ。そんなことないのは分かりきってるのに。


 萩原さんだったら、『そんなこと気にすんな。自分がよしと思えばそれでいいだろうが』とか言ってくれるのにな。


 なんか、なんとなーくだけど、行かない方がいいような気がしてきた。こういう時の女子の感って、嫌なくらい当たるんだよね。

 でも、もうあとには引けない。

 目の前にはにかにかしている冬山君の百点満点の笑顔。

「行こうか」

「...うん」

 変なとこで迷うな私。

 せっかくのパーティーなんだから、楽しまないと。


 いつものように一度深呼吸。不思議なもので、呼吸によって体の中の不調やもやもやなど、だいたいのことは整えられる。

 呼吸を数回、気持ちを安定させて、右足を1歩前に出して、

 車寄せを抜けて、冬山君が待たせておいたタクシーに乗り込んだ。


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