なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
「ですので桜さん、今日はあなたに用事があって来たんです」
「私に? まだなにか用事がありますか?」
「は、はい。重複しますが、お礼だけでもお会いして言いたかったので」
「...そうですか、それはわざわざご丁寧に。もうそれはうかがいましたから結構ですけど」
「......」
持参した紙袋は店長への手土産だったんだね。
貰った本人はぜんぜん嬉しそうじゃなくて、そんなことに気づいていない冬山君は、今日のところはこのへんで、また、改めますと言うと、私に『また連絡するね』と別れ際の挨拶を簡単にして、そそくさと帰って行った。
照れてるんだろうな。そして、きっととても緊張したんだろうな。
冬山君は店長に気があるんじゃないですか? ということを店長に言ってみたけど、
『私年下には興味無いの』
と、ぶったぎる答えを叩き出して、フロントに紙袋を起きっぱなしにして控え室へ下がって行った。
私は置き去りになった紙袋を慌てて抱えて、追いかけた。
冬山君の性格からすると、私のようなのらりくらりとした性格よりも、店長みたいにイェス・ノーはっきりとものを言う人の方が合っているのかもしれない。
彼は彼で自分で知らないうちにとんでもない方向へ暴走しているときがあるから、それをきっちりと指摘して修正してくれる女性の方がお似合いだ。
引っ張っていくように見えて、実は甘えん坊の年下キャラなのかもしれない。
私とは久しぶりの再開で気分が高まっただけなんだと思う。彼の行動にしてみても、違和感を感じたところも多々あったし。私も懐かしく思ったのも事実だから。
助けてくれたことは本当にありがたく思う。
今度は私が冬山君を後押ししてあげるからね! 店長のこと、頑張ってね。と、心の中で応援のことばを送った。