なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
熱いシャワーに打たれながら抱き合って、背中の傷をさする。
落ち着いてくると、頭から降ってくるお湯の刺激とその水音も心地よく感じてくる。
「こんな傷物、誰が相手にする?」
くすっと笑っちゃって、
よくよく考えれば、びしょびしょのまま裸で抱き合っているんだからおかしな話。
お湯が目に入ってきているから、涙なんだかお湯なんだかもうよく分からなくて、嬉しくて泣いているのか、安心して涙腺が緩んだ結果の涙なのか分からない。
どちらにしても、昨夜からのストレスは涙とともに流れて行った。
「足上げて」
「はっ?」
唐突に言われた意味が分からなくて固まれば、萩原さんがちょっとかがんで私の左腿に手を入れて持ち上げる。
「ちょ...待って」
目線が同じくらいの位置にきたところでふざけてバードキスをしてくるからまた笑っちゃって、
いい? って聞かれて、それに対して何回か小さく頷いた。
壁に押し付けられ、片足立ちになっているけれど、抑えられているから崩れ落ちることはない。
シャワーに打たれながらのキスもいいものだ。
目の前にはびしょびしょに濡れている彼がいて、きっと彼の目にもびしょびしょに濡れている私が映っている。
長いまつげから滴る水滴が絡み合っている視線を妨げる。
それがまた心をくすぐってきて、口の中に入ってくるお湯と舌の絡み合いも愛撫の一部になる。
内腿に伸ばされ自由に這い回る指は焦らしながら股のところまできて一番感じるところを探られて、
キスで塞がれているからあえぎ声は萩原さんの口の中に消え入る。
ざらりとしたところを必要以上に優しくゆるりとなぞられるとビクンと背中が跳ね、鳥肌が立つ。
足を更に持ち上げられ、立ったまんま一気に入れられて、ゆっくりと味わうように動かされれば声が漏れるけど、その声もシャワーの流れる音にかき消されていく。
背中に回した手は離れないようにしっかりとつかんで、でももっと奥まで来て欲しくて、右手を萩原さんの腰に滑りおろして自分の方へ引き寄せた。
「もっと欲しいの?」
意地悪にささやかれたけど、もう素直に頷いて、
「それじゃ分からないよ」
またそうやって弄んでくるから、だから...
耳元で初めて普通なら言えないような卑猥なことばを言ってやった。
萩原さんは口角をおもいきり上げて笑って、更に硬く熱くなって悶えさせられる。
「まずここで1回。あとはベッドで朝まで」
「聞きたいこと...あっっ! たくさん...ある...」
「ゆっくり聞く」
リズムを合わせて感じ合って、シャワーに打たれながら体の奥まで突かれることに酔いしれた。
でも、野々宮さんはこんなことだって計算の内だった。