なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
彼は今のところ独身だ。そして特定の彼女もいない。ここから10分のところで一人暮らしをしているということまで分かった。
お正月なのに実家に帰らないのは仕事があるからということだ。
外資系企業に勤める彼は、元旦のみ休みで二日からは仕事に入る。
お正月に重きをおかない外国では日本のように三が日を休むってことは無い。その代わりにクリスマス休暇を楽しむ傾向にある。
「家無し子なら、うち来る?」
思ってもみなかった嬉しすぎる提案に私の時間が止まった。
捨てる神ありゃ拾う神ありだ。
こんなに嬉しい申し出を拒否する資格は私にはないが、三つ指ついて、今日からお世話になります。宜しくお願いしますともすんなりは言えない。
まだ、気持ちの整理がついていないのも事実だから。
いくら気持ちのチェンジをしようと心に決めても、3年の年月は長いよ。思い出したらやはり悲しくなるし、心にぽっかりと穴が空いているのも本当のこと。
こんな状態の時に誰かに優しくされたらコロリと傾いちゃう自信だって、ある。
そんなこと自慢できるようなことじゃないんだけど。
大晦日からのやりとりを話していく上で、同情してくれて味方になってくれた冬山君には本当に感謝だ。しかも食事までおごってくれたし。
「ちょっと飲んじゃう?」
「明日仕事なんじゃないの?」
「午後から行けばいいだけだからぜんぜんオッケー」
「じゃ、飲む!」
にっこり微笑むと、頼んだステーキたちをさっさと片付けて、食後のコーヒーにまでたどり着く頃にはお腹はいっぱいになり、心も胃袋もほっこりした気持ちになった。
やはり食事は一人じゃなくて、誰かと一緒に食べるのが一番おいしい。