なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
ソファーを通り過ぎるときにちらりと視線を移して見ると、見ず知らずの男はまだ気持ちよさそうに寝ていた。
よし、今のうちにこっそり帰れば気付かれずに帰れる。
こんなことをしちゃった自分が本当になさけなくて仕方ない。
まじで、さっさとここを後にしたい。
いくらフラれたからって、初めて会ったであろう知らない男の人と知らないうちにこうなるなんて、絶対あってはいけないことなのに!
この年齢になって恥ずかしいにも程がある。
これが20歳そこそこだったら話は別、でもアラサーもいいとこのいっぱしの社会人がこれじゃぁ、話にならない! 洒落にもならないよ。
抜き足差し足でようやくたどり着いたドアは、なぜかぜんぜん開かなかった。
押しても引いても横にスライドさせようと力を入れてもびくともしない。 なぜ? どうなってるの? 壊れてるんじゃない?
「そこ開かないけど」
不意に聞こえたハスキーな声にはっとして後ろを振り返ると、ソファーで寝ていたはずの知らない男が起き上がってこっちに向かって歩いてくるところだった。
全裸で。