なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
取り立ててかわいくもない顔に化粧を薄く施してデニムにパーカーにバレエシューズ。
人混みに入り込んで動き回るんだから、これでいい。髪の毛は頭の上でお団子にしてバッグを持っていざ出陣。
がしかし、ドアのところでふと考えた。
部屋のカギが無い。どこにも無い。
そして、貰ってもいないことに今更ながら気がつくというこのお正月ボケ。実際にはお正月らしいことなどぜんぜんしてないけど。
もしかして萩原さんカギ持って出ちゃったのかな。スペア、無いのかな。
フロントに言えばいいか......どうしたらいいの。
ホテルでなんて暮らしたことないからどうしたらいいのか分からない。
そもそも今まではアナログな昔ながらのカギ一本で家を閉めていたんだから、カードキーみたいなのとか? 使ったことない。
どうしようかと考えていたその時、バッグの中にある携帯が音を立て始めた。
画面を見ると『非通知』
非通知でかけてくるのは今のところただ一人だけ。
「はい」
「夏菜」
......真の声じゃない。
誰?