なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】



 今を振り返ることたったの12時間前。




 私、秋川夏菜(あきかわなつな)28才、仕事はヨガのインストラクター、この道3年。

 大卒で1年会社勤めをしたけれど、どうにもこうにも合わないことが判明して、自分探しの旅に出たインドで出会った運命の天職がこれだった。

 以降めっきりはまって、インドでインストラクターの資格まで取って、日本に帰ってきた。

 たまたま人数合わせで行った飲み会で意気投合して出会ったのが、彼氏の伊東真(いとうしん)30才。

 同棲3年目にした昨夜、巷ではニューイヤーズイブの日に、何の前触れもなくフラれて家を追い出された。

 真が借りていたアパートだから、私が出て行かなければならないわけで、ちょっとばっかり喧嘩にもなって、『もう出てく!!!』と啖呵切って飛び出したのはいいけれど、そこにはきっと追いかけてきてくれるって淡い期待も込めていたわけだ...けれどもだ、それはことごとく打ち潰されることになった。

 追いかけてきてくれないし、電話、メールの一つもなかった。

 仕方なくこっちから電話をかけたら、電源を切られていたっていう最悪なパターン。

 二時間くらいして家に帰ってみてそして家のチャイムを鳴らしても無視。(カギは開いてたけど)

 てか、そもそもが既に家にいなかった。

 どういうことかというと...

 テーブルの上に置き手紙が一枚。


 『明日夕方までに荷物まとめとくから明日取りに来て』


 ってことは、今日はここに帰ってくるなってこと? 

 ってこと? 

 ってこと?? 

 この寒空の中、どこへ行けというわけですか?

 行く所なんて、どこにもないんですけど。それ、分かっててやってるの?

 何、いったいどういうこと?







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