なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

「そうですね例えば、身体が硬かった! ですとか、ここのポーズが難しかったなーですとか」

 誤って違ったことを聞かれても面倒なので、ヨガのことでね! と先に念を押すことにした。

 今は仕事。プライベートじゃない。

「あ、そうですか。ヨガのことで...」

 下を向くあかりちゃんは肩を落とした。

 ほんと自分に自分で、お人好しなのも大概にせえよって思う、私のこの性格。


「ああ、それではなんでもいいですよ。何か気になることがあるなら聞いて下さい」

 私は背中を丸め、受け入れる体勢を取った。だって、なんだかすっきりしない顔してるから。

 ヨガ終わりにはすっきりした顔でいてほしい。そうなってもらう為に私は努力をしている。

 もやもやして嫌な気持ち、悩み、迷い、マイナスな考えはこの時間に身体から全て解放して、何も考えない無の境地になって、新しい新鮮な空気を頭のてっぺんから吸収してもらいたい。

 それが、私が仕事をする上でのプライドだ。

 ぱっと顔を上げたあかりちゃんは目を見開いた。


 来るか?


「...真さんの...」



 ビンゴ。やっぱりそこか。




「もう、終わりましたよ。彼とはもう何もないです」

 笑顔でかわす。

「本当なんでしょうか」

「本当です。嘘を言っても仕方ないことでしょう?」


 こんなことを、こんなところで話す内容でもないし、嘘をつくことでもない。

 そもそも私は真に復讐をする誓いを(勝手に立てて)実行に移している最中なんだから。もう、何一つ気持ちは残っていない。


「......そうですか」

 下を向いたこの子は、本当ににもどかしい。

 この子、ほんとに、ほんとに。もどかしすぎる。


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