なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
にこやかな笑顔で爽やか青年を気取る冬山君はきっと仕事上でもこんなかんじなんだろうなと思う。
好感度だ。
反対に、してやられたことになった真に笑顔は無く、無表情で冬山君を睨んでいる。
きっと自分が立てたシナリオ通りに事が進まなかったことに腹を立て、どこから自分の作戦をひっくり返してこんな話にまとめているのか考えて、更にBプランでも考えているんだろう。
「あぁ。そうでしたか。なんだ、てっきり俺は違うことを考えていましたよ。夏菜も人が悪い、人を連れて来るならそう言えばいいのに。わざわざ誤解されるようなことを」
むかつく上に別人モードに入ってるし。
「いやいや、このままお宅にお伺いした場合、男手が必要でしょう」
間髪入れずに言葉を被せた冬山君は、スポーツで鍛えた体を冗談つきでわざと見せて、腕をぽんぽんと叩いた。
にしても、人が悪いのはお前だ! なんか、イライラしてきた。
握りこぶしを作った私の右手をそっと冬山くんの温かい手が覆う。
「それでは、近いうちに荷物は送りますので」
「そうですか、それではお手数かけますが、宜しくお願いします」
しれっと頭を下げる冬山君は、強い。
「あの、なんか、秋川さんごめんなさい」
肩をすくめて下を向くあかりちゃんの横にいる真は彼女には見向きもしないで冬山くんと視線を合わせて一人で火花を散らしている。
そんな真の視線を柔らかく受け流す冬山くんは余裕たっぷりにしか見えない。
「いえ、いいんです。私のほうこそなんか、その、不安にさせちゃうようなことをしていたとしたら、すみませんでした」
何言ってんの私?
意味不明なこと口走ってる。こんなこと私が言わなくてもいいことなのに。
なんでこうなっちゃうんだろう。