なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

「乗れ」


 冷たい目に冷たい声。

 背中で開いたエレベーターの扉を感じる。

 私の前に一歩踏み出した萩原さんに押されるかたちで後ろに一歩、また一歩と後ずさる私。


 知らぬ間にエレベーターの中に追い詰められて、

 二人しか乗っていないエレベーターの扉は、すーっと閉まり始めた。


 お願い誰か乗ってきて!

 この際誰でもいいからっ!

 怖いから二人にしないで!

 
 私の願いは見事にスルーされることになるわけだが、いろいろな気持ちが織り混ざって、顔を上げられない。

 


 うう。私が一体何をしたというの? 

 何もしてないよね、むしろ被害者だと思うよ。

 

 何も話さない萩原さんのその冷たい視線だけは頭上にしっかりと感じる。

 
 どうしよう。


 なんか言わなきゃ。


 言われる前に言ったほうがいいような気がする。


 鼻からゆっくりと深呼吸し気持ちを落ち着かせ、瞬きをひとつ。


 よしっ!


 思い切って顔を上げた。



 
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