なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

「今後は呼び出されても行くな。行ってもいいことはない。それに行くってことは少なからず未練があるってことだろ」

「無いです」


 きっぱり言える! 無い!


「じゃ、話は早い」

「はい。もう行きません」

「それから、あいつにはちょっと気を付けろ」

「え? 元彼? だから気を付けますって。私もかなりのショックでしたから」

「おまえはほんとに...それじゃないし...」


 と、言いかけたところで萩原さんの携帯が鳴って、話が途中で止まってしまった。

 気づけばエレベーターの中で、はじっこに追い詰められているまま。

 この間に広い方へするりと抜けたい。なんだか息苦しいよこれは。

 顔を右に向ければそこには広い空間。

 視線だけ萩原さんの方へ向けると嬉しいことに反対の方を向いて話してる。

 今がチャンス。

 喉をごくりと鳴らし、何事もなかったように振る舞いつつ、自分の髪を触って耳にかけてみる。

 蟹さんになった気分で横へ一歩、足を出してみた。

 よし、追ってはまだ気づいてない。

 静かにニ歩目を踏み出し...



 
 
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