なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
「なに一人で面白いことやってんの?」
ばん! と、音をたてて目の前にぬっと伸びてきたのは萩原さんの腕。
「誰が動いていいって言った?」
そんなことを言いながら、私の顔に手が伸びてきて、耳を優しく触りそのまま頬、顎まで指で撫でるように這い、
ぐいっと勢いよく顔を正面に向けられた。
目の前にはいたずらに笑う、意地悪な顔。
まだ電話終わってないようで、耳に当てたまま話してる。
でも...
「ん? なにその目。俺のこと煽ってる? 別に俺はここでもいいけど」
「なにいってんですか!」
小声になっちゃう。
だって。
そんな私を満足そうに眺め、「あー、ごめん。分かったよ、じゃこれから戻るわ。それまでに揃えられる?」
仕事の話だろう。そんなことを言って電話を切った。
すぐあとでエレベーターのドアが開いて、私だけ1人降ろされる。
「今日はもうここから出るな」
萩原さんは?
「いいな? 返事は?」
「...はい」
どこか行くの?
返事をきくと、満足そうに笑みを浮かべた。
エレベーターのドアが閉まり、私と萩原さんの間に分厚い鉄の扉が立ちはだかった。
電話かけてきた人と会うのかな?
タイミング的にそうだよね。
でも、電話から漏れてきた声は、女性の声だった。