なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

「いいですか?」

「もちろん私も付き合うよ。というか、これは吐き出さないと無理」


 怒りの気持ちというのは負のスパイラルの入り口でもある。

 そんなもんは相手にしないで受け流し、体から捨てるに限る。


 ヨガの神様、よろしくお願いします。と、深く頭を下げる。

 意識を自分の内側に集中し、呼吸に合わせて宇宙からのまっさらな『気』を頭のてっぺんから流し入れ、足の裏から地上へ戻す。

 いつもより2度ほどレッスンスタジオ内の温度を上げて、いつもよりも暗くして意識を集中し、店長の気と合わせるように体を動かす。


 指先足先まで、体中の骨の一本一本にまで意識して、


 たっぷりと汗をかき、気持ちを解放してリセットする。





 70分はあっというまに過ぎ去り、心地よい筋肉疲労とすっきり感に身体も精神も包み込まれた。




「っはー、すっきりした!」

「だね。シャワー浴びて帰ろっか」

「はい」

 もう最後だから、頭からシャワーをかけて汗を流す。体の内も外もすっきりさっぱりして、

 髪の毛を乾かしてからフロントに戻るとさっきと何かが違う。


「あ、社長来たんだ」

「社長ですか?」

「そーそー。この感じは社長が来た後なかんじ」

「へー、そうなんですか。私1回も会ったことないんからよく分からないですけど、こんな感じなんですね」


 いまだに見たことのない社長。

 来てたなら1回くらい会ってみたかったのに。

 写真も見たことない。


「あんた社長に会ったことなかったっけ? すんごいかっこいいよ。まじで惚れるから」

「それ聞いたらやっぱり会いたかったですよー。今度はいつ会えるんだろう」

「忙しい人だからね、ま、そのうち?」



 そのうちねぇ。

「早く支度して帰ろ」

 はい。と返事をして、さささっと片付けを済ませてスタジオ内の電気を消した。
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