なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】
お土産は、どんな国へ行っても必ず置いてあるもの。
マカダミアナッツチョコレート。しかも一箱。
正直こんなもんどこでも買えるし!
帰りの飛行機の中でだって買えるし今ではネットでも買えるようになってるやつじゃん。
てか、なぜにチョコレート?
しかし、当の本人はなんだかニコニコしていて上機嫌で。
更には誇らしげにしているようにも見える。
ますます萩原さんという人が読めない。
「このチョコレートが一番旨いそうだ」
へー。
「...そ、そうなんですねー。お、美味しそう。食べていいですか?」
「もちろん」
いただきますと言って一粒食べれば、うん、どこにでもある普通のマカダミアナッツチョコレートなわけで、取り立てて言うことも無し。
感想、いる? いいよね? このマカダミアナッツやっぱ違いますよね。産地どこなんでしょう? とか、チョコレートの味が違いますよね。どこのカカオなんでしょう? とか、要らないよね?
「で、萩原さんどこ行ってたんですか?」
箱にはなーんも書いてない。普通、国名とか首都とかがでかでかと書かれているもの。
でも、そんなものなーんにもなかった。
なので、感想のかわりに行った場所を聞いてみることにした。
「あれ? 聞いてなかった?」
誰に?
とは口に出さないかわりに小首をかしげてみる。
言わなければ向こうからなんかヒントになりそうなことを言ってきそうだし。
日焼けしているところを見ると...沖縄? とか?
「インドネシアに仕事で。前にお前に言った通り」
外国なんだ!!!
ん、待って。言った通り? いつ聞いたの私?
覚えてない。
「あ、そうかそうか。まだ何も思い出せないんだな、まぁもうこの際全て忘れて1からやり直しだな」
まさかのあの夜に聞いてたってこと?
ていうことだよね、この感じだと。
「ほんと、すみません」
ほら。と、手渡されたのはシャンパン。
落ちそうになる気をらなんとか持ち上げて一口飲む。
と、目の前が暗くなり気がつくと唇に温かい感覚。
唇を舐めるように這う舌は無防備だった私の口の中に入ってくる。
手に持っていたシャンパングラスはいつの間にか萩原さんにテーブルに戻され、私はチョコレートの甘さとシャンパンの苦さ、萩原さんの温かさに包まれた。