なにやってんの私【幸せになることが最高の復讐】

 電話の声。


 頭の中にポンと入ってきた。

 ずっと気になってたあの電話から漏れてきた女の人の声が、ここで頭に入ってきた。


 そしてそこで冷静になる自分がいた。



「ちょ...」

 唇を放して下を向き、萩原さんの胸辺りを柔らかく押す。

「なに」

 下を向いた私の顎を強引に持ち上げて、細めた目は夜空のように黒く、そのなかに無数の星が輝いているようにきらりと光った。

 私の身体は正直で、それを理性で抑えるのは難しくて、


 肩を上下して呼吸するはめになる。



「萩原さん、だって」

「俺はお前だけだよ」

「え...あ...んんっ」

 私の言葉はキスとともに飲み込まれ、言いたい言葉は流されていく。

 聞きたいことはたくさんあるのに。


「じゃなかったらこんなことしないだろ」

「でも...あっ、ちょっと」本当にしないの?


 まるでおもちゃで遊んでいるように萩原さんの口許が緩む。

 でも、嫌いじゃないと思っちゃう私もいて...

 でも、理性はそれを拒否していて...

 そして、このままでいいよっていう声もしてきて、

 はっきりしない限り先に進んじゃだめだし、踏み込んじゃダメ! って言ってくる私もいる。


 そんな考えとはうらはらに、私の口の中を自由に這う舌に私は支配されて力が抜けて、

 ダメだって思えば思うほど、高まる感情。欲情。



「はい、終わり」


 え? なにそれ。


 意地悪に笑う萩原さんの顔は、楽しげに見えて、

 私で遊んでいるようにも見えて、そんなんだから、余計にセーブしちゃう自分がいる。



「第一のミッションは終了したみたいだからな」
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