②灰川心霊相談所~『闇行四肢』~
灰川さんは、スタスタと、迷うこと無くその中へと入っていく。
仕方なく私達もそれに続くが、中に入るなり降り注ぐ視線が痛いのなんの。
私と白条君はベンチに腰掛け、灰川さんの要件が済むのを待つ。
「刑事一課の、篠林刑事をお願いします。ええ。はい、灰川という者です。ええ、話せばわかります。はい、よろしくお願いします」
受付をする灰川さんは、またあの厭らしい笑みをチラつかせていた。
それにしても、灰川さんに刑事の知り合いがいるとは。
詮索こそしていなかったが、この人の交友関係には謎が多すぎる。
まぁ、それ以外にも知ってることの方が少ないのだが。
「――はい? いや、そんなはずはありません。はい。……そうですか。ではこちらも法的手段でもって対応させてもらいますとお伝えください。はい。では失礼します」
……。一体どんな会話をしているのだ。
「いきましょう」
「え、なんか揉めてましたけど、用事はもういいんですか?」
「ええ、勝手にあっちから追ってきますよ」
灰川さんは、いつもの気だるそうな面持ちでさらりとそう答える。
そのまま署を出て、少し歩いたところで男が慌てふためきながら後ろから勢いよく駆けてくる。
「――待てよ、灰川! 早まるな! 話せばわかる!」
少年漫画の悪役のキメ台詞を口にしながら私達の前に立つこの男。
紺のスーツに、皺の目立つ赤いネクタイ。整えてはいるものの、ガサツさの滲みでる逆だった髪。
この人が先程話していた篠林刑事だろうか。
『狼』のようにつり上がった目元には、大きな目やにがついていた。
「……なんだ? このガキ達は?」
その獣のような眼光で私達を一瞥すると、怪訝そうに目をすぼめる。
「……篠林さん、とりあえずここじゃなんですから、近くの喫茶店にでもはいりましょう」
「ちっ。ったくよォ。厭な予感しかしねぇぜ、まったく」