②灰川心霊相談所~『闇行四肢』~
 
 私達はそのまま三船慎吾の自宅の中を捜索し始める。

 終始白条君が無言だったのは、やはり自分の従兄弟の死を改めて実感させられているからなのだろう。


 携帯電話、財布、衣類、仕事用の書類、原稿。

 それらの中から、手がかりになりそうなものを片っ端から調べていく。

 いつも通りの『調査』である。


 私は書類の中に、取材用なのか、数枚の航空券を見つけた。

 北海道行き。

 沖縄行き。

 四国行き。

 一番日付が新しいのは沖縄行きだ。

 こんなにもの航空券を携えて、どこにいこうとしていたのか? 

 ――いや、逃げようとしていたのか?
 

 一方、灰川さんは携帯の履歴を注視している。



「……三船慎吾が携帯電話で死亡の前日から頻繁に『愛子』という人物に通話を試みているようですが?」


 不意に、灰川さんが声色を変えて篠林刑事に尋ねた。


「……ああ、三船の交友関係は、もう洗ってある。そいつは、三船の女だ。もっとも、精神疾患をかかえていて、数カ月前から行方不明だがな」


「ちなみに……本名は?」


「『不知火愛子(しらぬいあいこ)』だ」




 それを聞いた灰川さんと白条君は、大きく目を見開いて絶句する。



「『あの』、不知火愛子ですか……!?」 


「白条君、知ってるの?」


「知ってるもなにも、三年前に世間を騒がせた大物の霊能者ですよ。数々の曰くつきの事件を解決してまわっていました。ほら、有名どころだと、『冥利坂マンションのポルターガイスト事件』あたりですね」


「数年前から交際していた節があるぜ。もっとも、不知火が精神病を患ってからは三船は距離を置いてる。なんでも錯乱した不知火に殺されかけたって話だ。一応、精神病院の看護師に裏はとれてるぜ。先に不知火の方が行方知れずになっているし、警察では注目こそしていたが結局ホシの候補にはあがっちゃいない。まぁ、生死不明だからな」



 三船慎吾が記者をしていた時に知り合ったのだろうか。


 その元恋人の女性と今回の事件に接点はあるのだろうか。


 新しい事実を知ることはできても、未だ『点』ばかりで話が見えてこない。
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