「記憶」
少し歩いたところで、
引っ張っていた手を紫月先生に掴まれ
逆に引っ張られてしまった。
「おあっ!」
「おい…橘花」
いきなり後ろに引かれ、
バランスを崩して先生の胸板に頭がぶつかる。
見上げると無表情の先生の姿。
今思えば、確信も何も無いのに
突っ走ってきてしまって
迷惑この上ない話だろう。
私はパッと先生から離れて、
「あの、先生、少し話があります!
…いえ、相談に近いです。
よかったらお昼休みの時間、
私に下さいませんか!?」
こうなりゃ、ヤケクソだーい!
と切羽詰まったように
先生のスーツをガシッと掴む。
暫し無言で私を見つめる先生だったが
軽く目を閉じ「いいだろう」と返事を貰った。