「記憶」
「最後の場面は、赤い空が映って…
ええと、何故か私は全く動けないんです。
感覚がないというか…」
「………もぅ、ぃぃ」
「いつも…薄赤い視界の中で、
男の人が…泣きながら私を見て
何か訴えてくるんです」
「………めろ」
「あれは……“死ぬな、ミラナ”」
「やめろ!!」
びっくりした。
さっきから小声で何か言ってるかな?
とは思ったけど、
こんなに大声を上げられるなんて…
いつも冷静で無表情な先生が、
こんなに………
「あ、ああの、すみません…
やっぱり嫌ですよね、
自分に似た人が夢に出てくるとか…
ていうか、メンヘラ黙れって感じですよね。
すみません、ごめんなさい、あの、」
「い、いや……悪い」
必死に謝罪をしていると
先生が申し訳なさそうに謝り、
額に手を添えて目を軽く閉じた。