「記憶」
何度も何度も、血だらけになって
泣くあいつを見た。
また救えなかった、
また仲間を死なせてしまった、
何故まだ私は生きているの、…と。
そんな過去を思い出させるくらいなら、
一生……俺の事も
忘れていてくれた方が
あいつは幸せなのかもしれないな。
小さく溜息を漏らし、
俺はガソリンスタンドへと入った。
「いらっしゃいませー!」
バイトであろう若い男女の声が響く。
ボーッとしながらも
店員の誘導通りに車を進める。
やはり過る、
「悲しまないで…」といった彼女の顔。
その表情は寂しげで
とても可憐で……
くそ……
「………会いてぇな…」
「へっ?」
つい、心の声が口から漏れた。
独り言を聞いていたのか、
隣にいる女性店員は
驚いた顔で固まっている。