「記憶」






心の中で苦笑を浮かべ、

ホームルームをてきとうに終え

俺は職員室へと向かう。




次の授業がなく、

職員室に座って生徒の

テキストの答え合わせをしていると

トントンと軽く肩を叩かれた。




見ればそこには秋林先生。



教師だというのに全く自重せず

化粧と服装が派手な俺より二つ年上の女教師だ。



なんの用だろうと思っていれば

こそこそっと耳元に口を寄せ


「今晩、食事でもいかかですか?」


と耳打ちしてきた。



溜息を付きたくなるが、

ここはグッと堪え


「生憎、想い人がいるので」と断る。





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