「記憶」
俺の言葉を聞くと、
工藤はぐっと拳を握りしめ
口を大きく開いた。
「俺は、先生と雅が犬猿の仲でも
恋人同士でも、ただの他人でも、
実は兄妹でも、別になんだっていいです」
「……………」
「けど、雅を傷付けるのは許しません。
先生だろうが親だろうか恋人だろうが
ヤクザだろうがマフィアだろうが
国家だろうが、絶対許しません。
雅の助けを無下にしないで下さい」
「……………」
「多分…なんとなく、先生にしか
助けてやれない気がするんです。癪ですけど。」
最後に不貞腐れたような、
少し悔しそうに眉を寄せて
ぶつぶつと言う工藤。
「ああ…了解した」
少し嬉しくなってクスリと笑いながら
それだけ言うと
工藤は「し、失礼します」と言って
体を強張らせたまま階段をかけていった。