「記憶」
けれど彼は、
「死ぬな…ッミラナ!」
と何度も繰り返す。
彼に触れたい。
そう思うのに、体が言う事を聞かない。
体の感覚も、
麻痺してきたのだ。
「俺を置いて行くつもりか!?
いい加減にしろ!許さねぇぞ!」
怒鳴る彼。
彼はたくさんの人々の希望を抱えている。
この、背中に多くのモノを抱えて
誰にも弱音を吐かず。
それを、支えていくつもりだった。
彼を一人にしては心配だから……
目付きが悪く誤解されやすいから
私がずっと一緒にいて
彼の負担を軽減してあげたかった。
「頼む…!死ぬな、ミラナ!」
彼の青い瞳から、
綺麗な涙が零れた。
一度も見た事がない彼の涙。
ときめきよりも、彼の涙と
堪えるような声色を聞いて
とても……切なくなった。