「記憶」
まだ少し肌寒く、
泳ぐという時期ではないが
足を着ける事くらいはでき、
冷たい水の感触や砂の柔らかさに
ただただ感動だ。
暫しはしゃぐ私を悟は
にこりと笑って見つめていたが、
落ち着いたところで
砂浜に二人並んで座った。
今日、ここに来たのは
過去に囚われないように
一つのケジメをつけるためだ。
「生きてきたんですね…あの日を……」
小さな声で呟くと
悟は相槌を軽く打つ。
「ああ、だからこそ、今がある」