「記憶」
風が髪を揺らす。
涼しい心地良い風を受け止めながら
私は彼の言葉を聞いた。
「俺達や皆が戦ってきたから
もうこの世界にキルドはいないし、
平和な世界で生きていられる」
「はい……」
「たとえ、歴史から抹殺された記憶でも
俺達が憶えてる。…それだけでいい」
キルドについては何度か調べたものの、
奴らに関する情報は
一切載っていなかったのだ。
けど、それでもいい。
私達の胸の中にあればいい。
心からそう思うのだ。
「次は、生きような……」
「え?」
悟が笑った。優しい笑みで。
あまりにも声色が優しくて、
聞こえていたのに
聞き返してしまう私に
彼は更に笑みを深めて……