溺愛系と天然系が恋しました!
あたしと太一君の姿が見えなくなっても、斉藤君は追い掛けては来なかった。
これ以上太一君にしつこくすると嫌われるって思ったからなのかもしれないけれど。
あたしが歩調を合わせて歩き出すと、太一君は掴んでいた腕を放し、家まで送ると言い出した。
一人になると、また考え事をして歩いてしまうかもしれない。
また変な人に絡まれるのは、流石に嫌だったあたしは、その申し出にコクンと頷いてみせた。
太一君て、不思議。
緊張感を感じない。
そのまま無言で自宅に帰り着いても、
多分平気なんだと思う。
だけど、あたしはさっき感じた事を、
そのまんま言葉にした。
「太一君て、きーち先輩と声がそっくり…。」
あたしの言葉を聞いた太一君は、
首だけこっちに傾けて
『んー?そりゃそうじゃん?兄弟なんだし。』
と、当たり前の様に言う。
「…だよねぇー。はぁー…。」
助けに来てくれたのが、
きーち先輩だと思った。
助けに来てくれたのが、
きーち先輩だったら…
そんな事を思っていると、止める間もなく流れ出す涙…
太一君は、首を前方に戻してため息をつきながら少し面倒臭そうに話し出した。